「AI×経済成長時代」の人的資本経営 Vol.4 「満足度の高い会社」ほど危ない?~「良い不満」と「悪い不満」の違いとは~

更新日: 2026-09-04

 

アジャイルHR代表、松丘啓司によるコラム。多くの企業で導入している「エンゲージメントサーベイ」ですが、中には、「従業員満足度調査」をエンゲージメントとして測定している場合も?第4回目は、経営の意思決定を誤るリスクを避けるために、エンゲージメント測定の際に知っておくべきポイントを解説します。

 

 

「満足度の高い会社」ほど危ない?―「良い不満」と「悪い不満」の違いとは

 

多くの日本企業が、「従業員エンゲージメント調査」を実施しています。しかし中身をよく見ると、労働環境や待遇への納得感を尋ねる従業員満足度(ES)調査となっているケースが少なくありません。それにもかかわらず、職場環境や制度などへの評価を回答させて、その平均点を「エンゲージメントスコア」と呼んで経営会議に報告する「年中儀式」が毎年繰り返されています。

 

ただ、この取り違えは、単なる用語の混同では済まされません。何を測定し、何を改善しようとしているのかという経営の意思決定そのものを誤らせる恐れのある、根深い問題と言えます。なぜなら、満足度を高める施策を積み重ねるだけで、組織の熱量は上がらないからです。むしろ数字だけが独り歩きし、経営が現場の実態を見誤るリスクさえあります。

 

 

満足度とエンゲージメントはまったく別の物差し

 

ハーズバーグの二要因理論を借りれば、両者の違いは明確です。報酬、福利厚生、職場環境といった要素は「衛生要因」であり、不足すれば不満を招きますが、満たしたからといって意欲を生み出しはしません。得られるのは、「今のままでいい」という現状肯定だけです。

 

一方で、エンゲージメント(EE)を動かすのは、ビジョンへの共感や成長実感、自己実現といった「動機づけ要因」です。これは自発的な貢献意欲や、非連続な目標達成への原動力に直結します。ワークエンゲージメントを構成する活力・熱意・没頭は、外部環境が整うのを待って生まれるものではなく、本来は一人ひとりの内側から湧き上がるべきエネルギーなのです。

 

それを、「会社が満足させてくれたら発揮する」という受け身の構えで捉えている限り、永遠にエネルギーレベルは上がりません。

 

 

いちばん怖いのは「不満のない社員」

 

ESとEEを同一視した組織が見落とす盲点は、「満足度は高いが、エンゲージメントが低い」層の存在です。

いわゆる、「ぶら下がり社員」などと呼ばれる人々を指します。この層は不満を抱いていません。だからこそ辞めもしないし、声も上げません。静かに組織に滞留し続けます。経営者からすれば、調査のスコアは悪くないように見えるため、この層の存在は発見されにくいのです。しかし、変革を最も強く阻むのは、声高な批判者ではなく、心地よく安住した現状肯定層なのです。

 

 

「慰労」ではなく「健全な不満」を活かす

 

ESを高めようとする施策の多くは、本質的に「慰労型マネジメント」に陥りがちです。社員の現状を肯定し、居心地の良さを提供することが目的化してしまう。しかし、組織が非連続な成長を遂げるために本当に必要なのは、居心地の良さではありません。むしろ、高いエンゲージメントを持つ人材ほど抱く、「もっとやれるはずだ」「リソースが足りない」「もっと速く動きたい」という健全な渇望や不満です。それを事業成長のエネルギーへと転換する取り組みこそが求められています。高い志にむけた挑戦を促すOKRの導入などが、代表的な取り組みです。

 

自社が行っている調査は、本当に社員の熱量を測っていますか。それとも、社員の居心地の良さを測定しているだけではありませんか。

 

エンゲージメント調査は、調査するだけでなくその後のアクションが重要であることはもちろんのことですが、そもそもの物差しが違っていると改善の方向性を見誤ってしまいます。ぜひ、点検してみてください。

 

■エンゲージメントサーベイの導入・既存サーベイの設問チェック等は、以下よりお気軽にご相談ください。代表の松丘が皆様の課題を直接お伺いする、無料相談も実施しています。

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