「AI×経済成長時代」の人的資本経営 Vol.1~目標管理制度でもっとも重要な視点~

アジャイルHR代表、松丘啓司による新コラム連載。第1回目は、これからの時代に必要とされる「目標管理制度」の考え方について解説します。
目標管理制度でもっとも重量なのは「意識の土台作り」
目標は大きく2つに分けられる。
人を萎縮させる目標と、人を解き放つ目標だ。
同じ「高い目標」であっても、その目標が心の中でどう扱われるかによって、生まれる行動はまったく別物になる。
評価と結びついた目標が生む「守りの心理」
MBOのように、与えられた目標の達成度が人事評価に直結するとき、人はその目標を「達成すべきノルマ」として受け取る。ここでは、挑戦したいという気持ちよりも、失敗を避けたいという防衛本能が働く。
人間の脳は、失うかもしれないものを守る方向に、優先してエネルギーを使う。
評価が目標と接続された途端に、思考は無意識のうちに縮こまる。達成が確実なラインまで目標を下げて申告したり、無難な方法しか選ばなかったり、上司の顔色をうかがいながら進捗を報告したりする。こうした行動は、恐れに対する自然な心理反応でもある。
しかし、この状態では、目標はいつまでも心の負担として作動し続ける。心が防衛的な守りの状態では、行動の量も質も抑制されてしまう。
自ら掲げた目標が生む「開かれた心理」
一方、OKRのような、評価に直結せず、自分自身の意志で掲げた「やりたい」目標は、まったく違う心理状態を生み出す。失敗しても評価が下がらないとわかっているとき、人ははじめて「本当はどこまでやれるか」を、恐れずに思い描けるようになる。
このとき目標は、義務ではなく願望として心に刻まれる。
願望として描かれた目標は、潜在意識の中で前向きに作動し続ける。通勤中や入浴中にふとアイデアが浮かぶ、というような現象は、目標が「やらされごと」から「自分ごと」に変わったときに起きる。
防衛のためのエネルギーが不要になった分、そのエネルギーがそのまま創造や工夫に転用されるのである。
心の状態が、行動の天井を決める
重要なのは、目標の高さそのものよりも、その目標に向き合う心の状態である。
恐れに支配された心の状態では、たとえ高い潜在力を有していても、達成可能な範囲でしか動けない。逆に、恐れから解放された心は、目標の志が高いほど、人の潜在力を解放する。
つまり組織が本当に設計すべきなのは、目標の内容や数値だけではない。
目標を掲げる個人の心が、「守り」と「攻め」のどちらの状態に向かうかという、目に見えない意識の土台作りである。同じ数字を目指していても、心の状態が違えば、そこから生まれる成果の量と質はまったく異なる。
目標管理を考えるうえで、まず問うべきはこの点であろう。