楠田祐 HR時評Vol.8【HR Technology Conference & Exposition 2026講演レポート~AIの実装から、仕事・キャリア・信頼の再設計へ~】

アメリカネバダ州ラスベガスで2026年10月22日から開催されたHR Technology Conference & Exposition 2026。人事・組織・テクノロジー領域に特化した世界最大級の本イベントについて、アジャイルHR取締役の楠田祐が現地からお届けします。
毎年、ラジオ(楠田祐の人事放送局)で現地からレポートをしてきた「HR Technology Conference & Exposition」は、今年は以下の4社のメールマガジンに同じ内容で寄稿し、お送り致します。
株式会社アジャイルHR:【楠田祐 HR時評】
TalentA Corp.:【楠田祐のHR思考考察】
ABABA Inc.:【楠田祐の人事・思想導標】
Acaric Co., Ltd. :【楠田 祐の人事公論】
会期:2026年10月20日(火)~22日(木)
会場:米国ネバダ州ラスベガス、Mandalay Bay Convention Center
本稿は公式プログラムと公開報道に基づくレポートであり、講演の逐語録ではありません。各セッションの確認できる論点に、日本企業への考察を添えています。
今回取り上げるセッションに共通するのは、AIを導入したという事実から一歩進み、仕事の進め方、社員の成長、人事の意思決定をどう変えるかという問題意識です。技術の進歩と組織の変革は同じ速度では進みません。その間をつなぐ人事の役割が、さまざまな角度から問われています。
1.成長を追いかける人から、成長を主導する人へ
セッション名:Stop Chasing Growth and Start Leading It
日時:2026年10月20日(火)9:00開始
会場:Oceanside D Ballroom
登壇者:Christine DiDonato氏/Career Revolution創業者
プログラム:Women in HR: Building Influence[1]
公式概要が掲げるのは、変化の速さに押されて成長を追い続ける状態から、目的と方向性を持って自らの成長を主導することへの転換です。AIや自動化によって成果を求められる速度が上がっても、成長の方向が明確でなければ、活動量だけが増えかねません。[2]
日本の人事への示唆は、学習機会を増やすことと、成長を支えることを区別する点にあります。研修、資格取得、社内公募などの選択肢が豊富でも、それが本人の目指す役割や仕事上の課題につながっていなければ、学ぶこと自体が負担になります。
人事が支えるべきなのは、「もっと学んでください」という呼びかけに加え、本人が何を実現したいのか、どの経験が必要なのか、何を優先しないのかを考える対話です。
キャリア自律を求める際には、選択肢を用意するだけでなく、選択の軸を持てるようにすることが重要になります。
2.HRテクノロジーの投資判断――製品の魅力を、事業上の価値へ翻訳する
セッション名:Clarifying the Case: Making Smarter HR Technology Decisions
日時:2026年10月20日(火)9:30~11:30
会場:Oceanside C Ballroom
登壇者:Stacey Harris氏/Sapient Insights Group最高リサーチ責任者兼マネージングパートナー
プログラム:HR Tech Intensive: Building the Business Case[1][3]
このプログラムの主題は、市場の宣伝や情報の多さに左右されず、経営陣に説明できる投資の根拠を構築することです。新設のHR Tech Intensivesは、最初に論点を共有し、会期中に情報を集め、最後に自社への適用を検討する継続型の学習として設計されています。[3]
日本企業に引きつければ、出発点は「どのシステムを買うか」よりも、「どの経営課題を、どの業務の変更によって解決するか」にあります。
例えば、人事への問い合わせ対応を効率化する場合、回答時間の短縮だけでなく、回答の正確性、社員が問題を解決できた割合、例外対応の負担を確認する必要があります。短縮できた時間を何に振り向けるかも、投資価値の一部です。
導入前に現状を把握し、期待する変化と検証方法を決める。これによって、投資の説明は承認を得るための資料から、導入後の成果を確かめる約束へと変わります。
3.仕事の再設計――AIと人間の役割をどう組み直すか
セッション名:Rethinking Work: Framing the Decisions HR Leaders Must Make
日時:2026年10月20日(火)9:30~11:30
会場:Mandalay Bay J Ballroom
登壇者:Kimberly Carroll氏/IAマネージングプリンシパル
Mark Stelzner氏/IA創業者兼マネージングプリンシパル
プログラム:HR Tech Intensive: Redesigning Work[1][3]
公式案内では、変化する環境に対応するため、役割、責任、ワークフォースモデルを見直すことが主題となっています。AIを既存業務に追加するだけでなく、仕事の設計そのものを問い直す視点です。[3]
日本企業への考察として、職種をひとまとめにして「AIで代替できるか」と考えるより、仕事を構成する活動へ分解することが有効です。
採用業務なら、求人要件の整理、候補者探索、日程調整、面接、選考判断、入社後のフォローでは、人間が担う意味もAIの支援可能性も異なります。情報処理の一部を任せる場合にも、誰が結果を確認し、例外を判断するのかを決める必要があります。
また、初級業務を減らす際には、若手が経験を積む機会をどう確保するかという課題が生じます。作業時間の削減と同時に、判断力を育てる仕事を設計することが、人事に求められます。
4.AIの実運用化――実験を、継続して価値を生む業務へ変える
セッション名:Setting the Lens: Making AI Practical, Responsible, and Scalable
日時:2026年10月20日(火)9:30~11:30
会場:Mandalay Bay K Ballroom
登壇者:Jason Averbook氏/Now to Next共同創業者
プログラム:HR Tech Intensive: Operationalizing AI in HR[4]
公式概要では、人事でのAI実験は広がっている一方、実運用の成功はまだ少ないという認識が示されています。価値の高い用途を見分け、データ、ガバナンス、利用定着に関する準備不足を特定することが主要な論点です。[4]
ここから読み取れるのは、「実験段階は終わった」というよりも、「実験を業務上の成果へつなげる課題が前面に出てきた」という変化です。
日本企業でも、限定された条件で便利に使えることと、部門や拠点を越えて安定的に使えることには距離があります。担当者が変わっても運用できるか、参照する情報を更新できるか、誤った回答が出た際に対応できるかを確かめなければなりません。
導入の成否を利用率だけで判断せず、再利用、業務品質、確認・修正に要する時間まで含めて評価する。その仕組みを持つことが、実運用への移行を支えます。
5.キャリアは「はしご」から「格子」へ
セッション名:Frameworks for Success: Creating Your Career
日時:2026年10月20日(火)9:40開始
会場:Oceanside D Ballroom
登壇者:Kathy Claytor氏/HRCI取締役会議長
プログラム:Women in HR: Building Influence[1]
公式案内では、キャリアを上方向へ進む「はしご」ではなく、横方向にも広がる「格子」として捉えています。女性人事リーダーが存在感を高め、経営層との議論に参加し、自らの経験や価値を伝えることが焦点です。[2]
日本企業への示唆は、昇進だけを成長の尺度としないことです。異なる部門、職務、事業環境を経験することによって、それまでとは異なる問題の見方を獲得できます。
人事の中でも、採用、育成、報酬、労務などの専門性を深めるだけでなく、それぞれが事業とどう結びつくかを理解する経験が重要です。
経営会議で発言する力も、専門用語を多く知っていることだけでは育ちません。事業の課題を理解し、人材面から何を変えればよいかを説明できることが、影響力の基礎になります。
6.AI活用の格差を、キャリア機会の格差にしない
セッション名:Breaking Gender Patterns Through AI Fluency
日時:2026年10月20日(火)10:40開始
会場:Oceanside D Ballroom
登壇者:Lindsay Bernhagen氏/学習・人材開発専門家
プログラム:Women in HR: Building Influence[1]
公式案内には、女性は男性より生成AIを利用する可能性が25%低いという記載があります。セッションは、AI活用の差が仕事上の可視性やキャリア機会の差につながり得る問題を取り上げています。ただし、同ページには元調査の対象や地域、調査時期が示されていないため、日本企業にも同じ差があるとは言えません。[2]
日本の人事が確認すべきなのは、AIを使わない理由を個人の意欲だけで説明していないかという点です。
利用権限があるか。仕事との関係を理解できるか。学ぶ時間を確保できるか。上司が試行を支援しているか。こうした条件によって、利用の機会は変わります。
AI活用を人事評価へ組み込む場合には、その前提となる機会の公平性を点検する必要があります。能力を評価しているつもりで、実際にはアクセスや支援の差を評価してしまうことを避けなければなりません。
7.Campbell’sのAI活用――採用担当者を戦略的アドバイザーへ
セッション名:Delivering Exponential HR Outcomes with AI: Practical Lessons from The Campbell’s Company
日時:2026年10月20日(火)14:45~15:30
会場:Oceanside B Ballroom
登壇者:Chris Garon氏/The Campbell’s Company・AVP HR Talent Acquisition
Brandon Londo氏/Workday・Senior Solution Consultant
David Wachtel氏/Workday・GM, Core HR & WFM[5]
公式概要では、採用、社内モビリティ、要員計画、管理職・社員の生産性を対象に、AIを人材マネジメントへ組み込む実践を扱っています。採用担当者を定型業務の処理担当から戦略的な人材アドバイザーへ移行させること、単独用途のAIから全社的なプラットフォーム連携へ進むことが学習目標です。[5]
この事例から日本企業が考えたいのは、採用業務が速くなった先で、採用担当者が何を担うかです。
事業部から依頼された人数を採用するだけでなく、必要な能力を明らかにし、社内異動や育成を含めた選択肢を検討する。そのためには、採用の効率化と同時に、人事内部の分業や情報共有も見直す必要があります。
AIによって余裕が生まれても、担当者の役割や評価が従来のままであれば、処理件数が増えるだけで終わる可能性があります。役割転換には、人間側の仕事の定義を変えることが必要です。
なお、確認できた公式概要には、削減金額や採用期間短縮率などの具体的な成果数値は掲載されていません。
8.Cisco基調講演――変革は「信頼」よりも速く進むことはできない
セッション名:Leading the Future of Work Through Transformation and Innovation
日時:2026年10月20日(火)15:45~16:45
会場:Mandalay Bay EH Ballroom
登壇者:Kelly Jones氏/Cisco最高人事責任者
Michael Kiley氏/Ciscoピープルデータ・生成AI戦略ディレクター[6]
オープニング・キーノートは午後に開催されました。公式概要は、継続的な変革の中で、人、文化、事業成果をどう整合させるかを中心に据えています。AIによる革新と人間同士のつながりを両立させ、組織の適応力を高めることが主題です。[6]
Jones氏の「変革は信頼よりも速く進むことはできない」という発言は、当日付のHR Executiveの報道で確認できます。[7]
この言葉を日本の人事実務に引きつけると、信頼とは社員に変化への賛同を求めるだけでは築けないものだと考えられます。自分のデータが何に使われ、AIの提案がどのように判断へ反映されるのか。誤りがあった際に、誰が訂正し、責任を持つのか。そうした問いに会社が答えられることが必要です。
関連するCiscoの別の公開資料では、調査対象社員の87%が、役割に関連する試行を通じてAIを学んでいると報告されています。また、ディレクター層には中堅社員よりAI利用への自信がやや低い傾向があり、管理職に応じた支援の必要性が示されています。これは当日の発言とは区別して参照すべき情報です。[8]
社員に変化を求める管理職自身も、学ぶ側に立つ必要があります。分からないことを認め、試し、確かめ、部下と仕事の変化を話し合う。その姿勢も、変革を支える信頼の一部になるでしょう。
補足資料――AI利用の拡大と、人材移行支援の遅れ
公開日:2026年10月21日
資料:HR ExecutiveによるValoir調査の紹介記事
位置づけ:初日のセッションとは別の、会期中公開資料
公開要約によれば、AIの従業員・要員関連の回答が正確で完全なデータに基づくと確信する人事リーダーは28%です。また、効果的なAI利用の教育を提供する組織は42%ですが、AIの影響を受ける仕事のリスキリングを提供する組織は6%にとどまります。[9]
この差からは、AIを使えるようにする教育と、AIによって仕事が変わる人を支える取り組みを、別々に点検する必要性が読み取れます。
人事は「経営が描く未来を、人間の営みへ翻訳する仕事」です。業務の効率化を、新しい役割、学習機会、実務経験、移行期間へと具体化する。その責任は、AIの利用が広がるほど大きくなります。
最終日のプログラムから浮かび上がるのは、「AIで何ができるか」から、「AIを組み込んだ仕事を誰が、どのように運営するか」への問いの移行です。実運用、人間の判断、投資の根拠、仕事の再設計、そして継続的な変化への対応が、一日の主要な論点になっています。
9.Accenture――AIエージェントを、人事の実業務へ組み込む
講演名:Reinventing HR with Agentic AI: Lessons from Accenture’s Enterprise-Scale Transformation
日時:10月22日(木)8:15~9:00
会場:Mandalay Bay K Ballroom
登壇者:Wes Wu氏/Accenture・Digital HR Transformation Lead
Katie Baker氏/Accenture・Managing Director, Accenture Internal HR
公式概要は、AIエージェントを本番運用に移した事例として、採用、要員計画、社員支援の三つを挙げています。採用では候補者の探索・選別・順位付けから初回面接の日程設定までを連携させ、要員計画では営業・財務・人事を接続します。社員支援ではAIが案内を担い、人事担当者は複雑な相談や助言に注力する構想です。[10]
日本企業への示唆は、人事部門の中だけで効率化を完結させないことです。
例えば、採用担当者が候補者を探す速度を上げても、事業計画と要員計画がつながっていなければ、必要人数や必要能力の見直しは後手に回ります。営業の見通し、財務の制約、人材の供給可能性を接続して初めて、採用と育成を一体として考えられます。
AIエージェントの導入は、既存の分業や承認の流れを問い直す機会になります。ただし、公式概要の運用事例を、採用の最終判断まで全面的に自動化したという意味に広げて読むことはできません。
10.Pure Storage――AIの効率と、人間の判断をどう両立させるか
講演名:How to Drive AI-Powered HR, Without Losing Human Judgment
日時:10月22日(木)8:15~9:00
会場:Mandalay Bay J Ballroom
登壇者:Niki Armstrong氏
所属:Pure Storage・Chief Administrative & Legal Officer
公式概要では、採用、報酬分析、社員体験におけるAIの利用を扱いながら、事情の解釈、意図の理解、組織の価値観との整合には人間の判断が必要だとしています。人による確認、透明性、責任の所在を含む運用設計が中心です。[11]
日本企業に引きつけると、「最後は人が確認する」というルールの実効性が問われます。
担当者がAIの提案をそのまま承認するだけなら、人間の関与は形式的になります。判断の根拠を理解し、不足する情報を確かめ、必要に応じて提案を修正できなければなりません。
人事の判断には、数字に表れにくい事情もあります。本人が経験した職場環境、挑戦する機会の有無、上司との関係などを、データだけで十分に把握できるとは限りません。
人事に必要なのは、AIの出力を読む力に加え、その出力では捉えられていないものを問う力です。
11.Stacey Harris氏――会場で得た知見を、経営が判断できる投資案へ
セッション名:From Insight to Investment: Turning Ideas into a Defensible Business Case
日時:10月22日(木)13:30~14:00
会場:Demo Theater 2・Expo Hall
登壇者:Stacey Harris氏
所属:Sapient Insights Group・Chief Research Officer and Managing Partner
このセッションは、HR Tech Intensivesの投資判断プログラムの締めくくりです。公式概要では、会期中に得た知見を整理し、前提やトレードオフを検討したうえで、自社で資金を確保し、実行できる提案へまとめることを目標としています。[12]
日本企業への示唆は、出張報告を製品紹介で終わらせないことです。
帰社後に必要なのは、「興味深い製品があった」という報告に加え、「自社のどの問題に適用できるか」「何のデータが不足しているか」「誰と検証するか」を示すことです。
投資案には期待する効果だけでなく、その効果が成立する条件を含める必要があります。利用されること、情報が更新されること、現場の運用を変えられることなどです。
経営が判断できる提案とは、魅力を大きく描いた提案ではなく、実行に必要な条件まで説明できる提案だと考えられます。
12.Jason Averbook氏――AIの取り組みを、進める・整える・止める
セッション名:Scaling What Works: Turning AI Insights into Operational Plans
日時:10月22日(木)13:30~14:00
会場:Mandalay Bay EH Ballroom
登壇者:Jason Averbook氏
所属:Now to Next共同創業者
公式概要は、AIの取り組みを価値、実現可能性、リスクから評価し、次に進めるもの、基盤整備が必要なもの、一時停止や中止を検討するものを見極める構成です。一つの用途を、構想や試験段階から実業務の成果へ進める次の行動を定めます。[13]
日本企業への示唆は、「AI案件を増やすこと」と「AIで成果を出すこと」を区別することです。
試験導入が増えても、運用責任者や評価方法が決まっていなければ、実験が積み上がるだけになります。一方、使われない理由を調べれば、ツールの性能ではなく、情報の古さ、業務との不一致、現場の不安が原因と分かることもあります。
進まない案件を漫然と継続せず、何を整えれば再開できるかを明らかにする。中止する場合も、その判断から得た知見を残す。こうした意思決定が、AI活用を継続的な業務へ変えるために必要です。
13.仕事の再設計を、現実の組織に落とし込む
セッション名:Translating Work Redesign into Reality
日時:10月22日(木)13:30~14:00
会場:Demo Theater 1・Expo Hall
登壇者:Kimberly Carroll氏/IA・Managing Principal Mark Stelzner氏/IA・Founder & Managing Principal
日時は全体アジェンダとHR Tech Intensivesの総合案内に基づきます。別の紹介ページには異なる時刻表示があるため、実際の参加時には当日案内の確認が必要です。[1][3]
公式概要は、仕事の再設計案を、実現可能性、効果、組織の準備状況から検討する構成です。理想として魅力的な案と、現実に採用できる案を見極め、実行を妨げる要因を確認します。[14]
日本企業への考察として、仕事の再設計には、業務フローとともに責任、評価、育成の見直しが必要です。
AIによって定型業務を減らしても、担当者の評価が処理件数中心のままであれば、新しい役割に時間を使いにくくなります。また、若手が経験を積んできた仕事を自動化するなら、判断力を育てる別の経験を用意しなければなりません。
「仕事を減らす計画」と「人が次の役割へ進む計画」を一緒につくる。その接続を担うことが、人事の役割になります。
14.Gianna Driver氏――AI変革の出発点は、自社の準備状況を知ること
講演名:An AI Transformation Roadmap for HR Leaders: From Assessment to Implementation
日時:10月22日(木)14:00~14:30
会場:Oceanside C Ballroom
登壇者:Gianna Driver氏
所属:One Workplace・Chief People Officer
公式概要が示す流れは、従業員のAIへの準備状況とスキルの不足を把握し、対象に応じた学習・能力開発を設計し、変化を支える文化とリーダーシップを整え、実行計画へつなげるというものです。[15]
日本企業への示唆は、全社員に同じ研修を提供する前に、仕事ごとの違いを確認することです。
営業、開発、人事、現場管理では、AIによって変わる活動も、必要な判断力も異なります。同じ部署でも、仕事の経験や権限によって必要な支援は変わります。
また、準備状況は知識だけでは測れません。実務で試せる環境、上司の支援、情報へのアクセス、学習時間を確保できるかも含まれます。
実行計画には、導入日だけでなく、社員が新しい仕事を担えるようになるまでの移行過程を組み込む必要があります。
15.閉幕基調講演――未来に終着点はない
講演名:The Future Is Unbound… There Is No Finish Line
日時:10月22日(木)15:25~16:10
会場:Mandalay Bay EH Ballroom
登壇者:Prerna Ajmera氏
公式の最新肩書:AI and Workforce Transformation Executive
初期の告知には15:15開始やMicrosoftでの肩書の記載がありますが、本稿では最新の個別セッションページの時刻と肩書を採用しています。[16]
公式概要は、AI時代の変革を、導入して安定すれば完了するものとして捉える限界を示しています。新しい機能が次々に現れる環境で、事業・人材への成果を軸に、人間とAIの判断の境界を定め、組織が継続的に学び直せる運営をつくることが主題です。[16]
日本企業への示唆は、変革を一度きりの大型プロジェクトとして扱うだけでは足りないことです。
ただし、終着点がないからといって、社員に際限なく変化を要求してよいわけではありません。何を変えるか、なぜ変えるか、何を優先しないかを示し、学ぶ時間と対話の機会を確保する必要があります。
人事部門自身にも、制度をつくった後の見直しが求められます。導入件数や研修受講率だけでなく、社員の仕事がどう変わったか、現場の負担がどう変わったかを確かめ、運用を更新していくことです。
最終日のプログラムを踏まえた考察
各セッションを通じて見えてくるのは、AIの実装が、人事の役割分担、判断の責任、学習、評価、予算の使い方にまで及ぶということです。
「AIを導入した後、人事は何をするのか」という問いに、あらかじめ答えておく必要があります。複雑な相談に向き合うのか、事業と人材の計画を接続するのか、社員が次の役割へ移る過程を支えるのか。それを具体的な仕事として設計することが重要です。
人事は「経営が描く未来を、人間の営みへ翻訳する仕事」です。AIが動く仕組みと、人が働き、学び、判断できる仕組みをつなぐ。その実行が、これからの人事に問われています。
出典
[1]公式全体プログラム
https://www.hrtechnologyconference.com/2026-full-agenda
[2]Women in HR公式案内
https://www.hrtechnologyconference.com/women-hr
[3]HR Tech Intensives公式案内
https://www.hrtechnologyconference.com/hr-tech-intensives
[4]Jason Averbook氏セッション公式概要(10月20日)
Setting the Lens: Making AI Practical, Responsible, and Scalable
https://www.hrtechnologyconference.com/seminar-programme-2026/setting-lens-making-ai-practical-responsible-scalable
[5]Campbell’sセッション公式概要
https://www.hrtechnologyconference.com/seminar-programme-2026/workday
[6]Cisco基調講演公式概要
[7]Cisco基調講演に関する当日報道/HR Executive
https://hrexecutive.com/cisco-cpo-transformation-cannot-move-faster-than-trust/
[8]Ciscoの関連公開資料
https://blogs.cisco.com/news/ciscos-journey-in-ai-workforce-transformation
[9]Valoir調査に関する公開記事/HR Executive
https://hrexecutive.com/hr-ai-use-doubles-but-confidence-remains-low-valoir-finds/
[10]Accentureセッション公式概要
https://www.hrtechnologyconference.com/seminar-programme-2026/reinventing-hr-agentic-ai-lessons-accentures-enterprise-scale-transformation
[11]Niki Armstrong氏セッション公式概要
[12]Stacey Harris氏セッション公式概要(10月22日)
From Insight to Investment: Turning Ideas into a Defensible Business Case
https://www.hrtechnologyconference.com/seminar-programme-2026/insight-investment-turning-ideas-defensible-business-case
[13]Jason Averbook氏セッション公式概要(10月22日)
Scaling What Works: Turning AI Insights into Operational Plans
[14]仕事の再設計セッション公式概要(時刻は[1][3]を採用)
https://www.hrtechnologyconference.com/hr-tech-intensives-2/translating-work-redesign-reality
[15]Gianna Driver氏セッション公式概要
[16]閉幕基調講演公式概要
https://www.hrtechnologyconference.com/seminar-programme-2026/future-unbound-finish-line
2026年10月26日(月)
楠田 祐