なぜOKRは経済成長時代における目標管理のプラットフォームとなりうるのか

更新日: 2026-01-05

 

長かった「失われた30年」がようやく終わりを迎えつつある。長期間のデフレの中で経済成長は横ばいを続けたが、その間に培われた価値観、人材観が日本企業に深く染みついている。

 

「人は資源」という無意識の観念

経済のパイが拡大しない中で、企業は限られたパイの奪い合い競争を行ってきた。株主資本主義が企業に浸透したのもこの30年のことだ。特に上場企業では、通期予想の目標を達成するために、今期の業績(短期業績)が最重視されてきた。そのために、業績目標(パイの獲得目標)を組織の末端まで分配して、進捗管理が徹底された。そこにおいて、人はパイ獲得競争の兵士のような位置づけにあった。

国内中心に事業を行っている大多数の企業では、内需が拡大しない中で利益を生み出すために効率化が続けられてきた。人に関わる費用は投資ではなく、今期の利益にかかるコストと見られるため、常に抑制の対象となった。

エンゲージメントサーベイで従業員エンゲージメントを測定したり、1on1でメンバーのケアを行ったりするなど、個々の施策としては人を大切にする取り組みも行われてきた。しかし、労働力不足の環境において、企業運営に必要なリソースを確保してモチベーション高く働いてもらうことが目的、と公言している企業も少なくない。要は「人は資源」と考えられているのである。

 

新たな需要を獲得するための強みの構築が必要

経済がデフレからインフレに移行する環境において、このような人材観は見直されなければならない。インフレによる経済規模の拡大とともに生まれてくる需要を、短期業績のコントロールという発想で獲得することはできないからである。新たな需要を獲得するには、新たな強みの構築が必要とされるが、他社と差別化しうる強みを単年度で実装することは難しい。

強みを構築するためには投資が必要となる。投資の対象はかつてのような設備投資から、知的資本、社会・関係資本、人的資本といった無形投資にシフトしている。知的資本、社会・関係資本といった無形資本を創るのは人である。「物をつくるまえに人をつくる」と松下幸之助は言ったが、今日、人的資本を含めた無形投資は同時に行われる必要がある。

 

 

OKRを物差しとした組織風土改革

新たな強みは誰かが創ってくれるものではなく、組織全体で実装すべきものである。そのために、企業がなりたい姿に向けて全員を方向づける目標のネットワーク構築が必要になる。そのプラットフォームがOKR(Objectives and Key Results)だ。

OKRの導入は新たな強みを創るのと同時に、「失われた30年」の間に組織に染みついた固定観念を払拭する「アンラーニング」のプロセスでもある。目標は上から与えられる、挑戦しても評価されない(失敗すると評価が下がる)、他部門との連携より目の前の仕事が重要といったマインドが変わらなければ、経済成長の時代が来たからといって、企業も自動的に成長できるわけではない。

もちろんOKRだけですべてが解決されるわけではないが、OKRにもともと内包されている、「主体的に目標を立てる」「失敗を許容する」「連携を促す」といった価値観が、固定観念をアンラーニングし、新たな基準を構築する際の物差しとなりうる。