エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査は何が異なるのか
エンゲージメントサーベイを導入する企業が増えています。しかしその際、「エンゲージメント」と従来の「従業員満足度」が混同されているケースも散見されます。どちらも人に関わる調査なので同じようなものだろうと思われがちですが、実は両者の概念はかなり異なるものです。
エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査の違い
エンゲージメントは仕事や組織に対する、個人の心理的な関与や思い入れの度合を指しています。つまり、エンゲージメントは一人ひとりの心情や気持ちの程度を定量化した尺度であり、人の「内側」を対象とするものです。
一方で、従業員満足度は会社の理念、制度、設備、上司のマネジメントなどに対して、どれくらい満足しているかを点数化したものです。満足度の対象は、いずれも個々人の「外側」にあります。満足度調査はそれらの対象に対して、従業員が評価・採点するための調査と言えます。
このように両者は、見ている方向(内側か外側か)がまったく異なっているのです。そのため、従業員満足度調査をもってエンゲージメントサーベイの代用にしてしまうと、いくつかの弊害が起きることになります。以下では、それらの問題点について解説していきます。
弊害①:エンゲージメントの実態がわからない
従業員満足度調査ではエンゲージメントが測定されないため、エンゲージメントの状態がわかりません。満足度が高まっているから、エンゲージメントも向上しているとは一概に言えないのです。
従業員満足度とエンゲージメントには相関関係があるのではないか、と質問されることもあります。もちろん、その可能性はありますが、満足度調査のどの項目がエンゲージメントとどの程度の相関関係にあるかは、満足度とエンゲージメントの両方を測定して、結果を分析してみないとわかりません。つまり、従業員満足度調査を行っただけでは、エンゲージメントの実態が把握できないのです。
弊害②:打ち手を誤る恐れがある
満足度調査が重宝される一つの理由は、改善すべき対象が明確であることです。満足度が低い項目を改善すれば、次回のスコアは上がるでしょう。けれども、それによってエンゲージメントが向上したかどうかはわかりません。
もしかすると、エンゲージメントに対してあまり影響しない対策を講じている恐れもあります。改善の対策を打つには相応の労力を要するため、労多くして益少なしといった結果に至る可能性があります。
弊害③:失望を招く恐れがある
満足度は従業員による評価・採点と言いましたが、換言すれば従業員からの改善要望であるとも言えます。経営者が従業員の改善要望に耳を傾け理解することは重要ですが、それらすべてに応えられるわけではありません。
満足度調査に回答することによって、従業員は自分の意見を経営に反映できることを期待します。しかし、経営には経営の優先順位があるため、満足度調査の結果が低かったからといって、すぐに改善されるとは限りません。そのようなことが繰り返されると、満足度調査に回答しても何も変わらないという失望が広がってしまう恐れがあります。
弊害④:主体性が希薄化する
満足度調査の対象は自分の外側にあるため、従業員一人ひとりでは解決できない問題がほとんどです。そのため従業員は、経営や人事部門や上司に改善を期待し、受け身の姿勢で待つしかありません。
一方、エンゲージメントは一人ひとりの心の状態なので、経営や人事部門が旗を振れば高まるという問題ではありません。会社としての対策は不可欠ですが、それぞれの職場における取り組みも同時に重要になります。その際には全員が主体性をもって、エンゲージメント向上への取り組みに参加することが必要です。待ちの姿勢で、エンゲージメントは高まらないのです。
以上、エンゲージメントサーベイと従業員満足度調査の違い、従業員満足度調査をエンゲージメントサーベイの代用とすることの問題点について解説しました。エンゲージメントを測定したいのであれば、はじめからそれに特化したサーベイを用いることが得策と言えます。
従業員エンゲージメント向上に役立つエンゲージメントサーベイをお探しの方は、A&Iエンゲージメント標準調査をご参照ください。