【連載】ビジネスパーソン1,000人調査から紐解く企業における目標管理の実態②

更新日: 2024-09-25

日本企業の多くが導入している、MBOをはじめとした目標管理手法。ビジネス環境の変化と共に、従来の管理手法の限界を感じつつも、評価制度との関連や、運用面における課題等、高いハードルを前に検討が進まない企業も少なくありません。

一方で、アンテナの高い企業はすでに、OKR等の新しい目標管理手法を導入し、自律的に社員が目標に迎えるような仕組み作りを進めています。

企業のパフォーマンスマネジメント変革を支援する株式会社アジャイルHRは、現在の日本の企業における目標管理の実態と課題を調べるべく、全国のビジネスパーソン1,000人超を対象に、インターネット調査を実施しました。

【ビジネスパーソン1,000人調査から紐解く企業における目標管理の実態】として、2回に分けてその調査結果をお届けします。第1回目のコラムはこちらをご覧ください。 

 

 

【MBOの効果と課題は?】

図1で示したように、多くの企業がMBOを目標管理手法として導入していることが分かりました。以降では、そのMBOの効果や課題に着目していきます。

MBOを導入している企業の従業員が感じている、MBOの効果やメリットは図4のようになりました。

 

■図4 MBOの効果やメリットはなんですか?(複数選択)■

 

MBOの効果やメリットについては、以下の項目が上位となりました。

– 「今期やるべき事や必達すべき数値目標が明確になる(57.0%)」

– 「会社のビジョンや経営層の目標・ミッションなどが明確になり浸透しやすい(45.9%)」

– 「何をすべきかを自分で考え、自分で目標設定ができる(36.3%)」

 

続いてMBOの課題については、図5のように下記の項目が上位となりました。

– 形ばかりになっており、形骸化している(31.4%)

– 毎年同じような目標を立てており、発展性がない(30.1%)

– 目標がほぼ決められてしまい、やらされ感が強い(27.8%)

 

■図5 MBOについて、課題に感じていることはなんですか?(複数選択)■

 

MBOを導入している企業におけるMBOの継続可否については、ポジティブ回答が56.6%、ネガティブ回答が43.4%でした(図6)。

 

■図6 現状の目標管理は自社に適しており、このまま続けるべきと思いますか?(単一選択)■

 

 

【MBOとOKRの有意差検定】

次に、目標管理手法の中でよく対比される「MBO」と「OKR」において、「効果・メリット」と「課題」の有意差を統計的に分析しました。

 

効果・メリットについては、下記のような有意差が見られました。

 

MBO特有の効果・メリットが見られた項目としては、以下の2つです。

① 「会社のビジョンや経営層の目標・ミッションなどが明確になり浸透しやすい」

② 「人事評価の判断基準がわかりやすく、従業員からの納得が得られやすい」

 

一方、OKR特有の効果・メリットが見られた項目は、以下の3つです。

① 「縦や横(他部署含む)のコミュニケーションが活発化する」

② 「上司(または部下)とのコミュニケーションが密になる」

③ 「従業員の自律や自主性を高めることに貢献している」

その他の8項目については、「MBO」と「OKR」において統計的に優位といえる差は見られませんでした。

 

次に、課題については下記のような有意差が見られました。

 

MBO特有の課題が見られた項目は、以下の3つです。

① 「目標を達成しやすいよう低く設定するケースがある」

② 「自分の目標に関係のない業務の優先度が低くなりがち」

③ 「短期業績目標が中心のため、腰を据えた中長期的な取り組みがしづらい」

 

一方、OKR特有の課題は見られませんでした。

その他の10項目は、「MBO」と「OKR」において統計的に優位といえる差は見られませんでした。

 

 

【株式会社アジャイルHRによる考察】

調査の結果から、課題は感じつつも一定の効果を感じられるため、引き続きMBOを導入している企業が多くあることが分かりました。

 

アジャイルHRにおけるこれまでのサポート事例から、0→1(ゼロイチ)や1→10(イチジュウ)と言われるような、事業の方程式を探す、ないしはこれから作っていくという『投資フェーズ』では、新しいアイデアの創出やトライ&エラーが必要となるため、MBOはフィットしづらく、OKRのような目標管理が適していると考えられます。

 

一方で、10→100(ジュウヒャク)と言われるような事業が成熟・安定ステージに入った『拡大再生産フェーズ』では、利益を生み出す方程式が確立しており、前年対比なども容易となるため、MBOが適用可能です(『拡大再生産フェーズ』におけるOKRの活用も可能)。

 

ただし、本調査結果にも見られるとおり、大企業の多くが導入しているMBOには、

– 形ばかりになっており、形骸化している

– 毎年同じような目標を立てており、発展性がない

– 目標がほぼ決められてしまい、やらされ感が強い

といった課題もあり、従業員のエンゲージメントを高めにくいという問題があります。そのため、MBOを目標管理手法として導入している場合は、従業員エンゲージメントを高める包括的なパフォーマンスマネジメントが求められます。

 

図7は、目標管理(OKR)、キャリアデベロップメント、360度フィードバックを組み合わせ、1on1でマネジャーがメンバーの支援しながら、エンゲージメントサーベイで効果を検証することで、従業員エンゲージメントを継続的に高めるパフォーマンスマネジメントの構築の理想とされる全体像です。

 

1on1や、キャリア研修等、比較的導入をしやすい施策については、すでに多くの企業が対応をしている一方で、目標管理制度の改定については、評価制度を含む現人事制度への影響や、現場における運用変更の負担等、検討事項が数多くあるため、多くの企業にとって後回しにしがちな課題となりがちです。 包括的な取組みを行うにあたって、「何から手を付けてよいのか分からない」状態にある企業は少なくありません。

 

自社において、どこに課題があるのかをまずは「見える化」した上で、状況の整理とプライオリティの判断を行い、スピーディーな改革のシナリオを策定していくことが必要です。

■図7 理想とされる包括的なパフォーマンスマネジメントとアジャイルHRのサービス■

 

株式会社アジャイルHRのサービス詳細については、以下までお問合せください。

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