【調査レポート】ビジネスパーソン1,000人調査から紐解く企業における目標管理の実態
アジャイルHRは、全国のビジネスパーソン1,000人超を対象に、日本の企業における目標管理の実態と課題についてインターネット調査を実施しました。
今回のアンケートでは、従業員500名以上の企業に勤める会社員1,124名のうち、933名(83.0%)が目標管理を行っていると回答しています。目標管理を行っている回答者が導入している目標管理の手法の内訳は図1のとおりです。
なお、「MBO」と「OKR」は、下記のように定義してアンケートを行いました。
MBO=期初に会社の目標を個人にまで配分し、期末に目標の達成度に基づき人事評価を行う方法
OKR=会社の目標達成に向けて各人が主体的に野心的な目標を設定する方法。人事評価とは直接連動させない
図1 導入している目標管理手法の内訳
約半数の449名(48.1%)がMBOを導入していました。MBO以外の目標管理手法としては、自社独自の目標管理が19.2%、現場運用が16.5%、プロジェクト単位での目標管理が9.5%、OKRは6.6%でした。
企業規模別の目標管理手法は図2のようになりました。
図2 企業規模別の目標管理手法
最も導入比率が高いMBOは、従業員数が多くなるにつれて導入比率が高くなっている傾向が見られました。
次に業種別の目標管理手法(図3)を見ると、MBOの導入比率は、「生活関連サービス業・娯楽業」、「情報通信業」、「製造業」が高く、「運輸業・郵便業」、「電機・ガス・熱供給・水道業」、「その他サービス業」が低いという傾向がありました。
図3 業種別の目標管理手法
以降では、目標管理手法として最も導入比率が高かったMBOの効果やメリットに着目していきます。
MBOを導入している企業の従業員が感じている、MBOの効果やメリットは図4のようになりました。
図4 MBOの効果やメリットはなんですか?(複数選択)
MBOの効果やメリットについては、以下の項目が上位となりました。
– 「今期やるべき事や必達すべき数値目標が明確になる(57.0%)」
– 「会社のビジョンや経営層の目標・ミッションなどが明確になり浸透しやすい(45.9%)」
– 「何をすべきかを自分で考え、自分で目標設定ができる(36.3%)」
続いてMBOの課題については、図5のように下記の項目が上位となりました。
– 形ばかりになっており、形骸化している(31.4%)
– 毎年同じような目標を立てており、発展性がない(30.1%)
– 目標がほぼ決められてしまい、やらされ感が強い(27.8%)
図5 MBOについて、課題に感じていることはなんですか?(複数選択)
MBOを導入している企業におけるMBOの継続可否については、ポジティブ回答が56.6%、ネガティブ回答が43.4%でした(図6)。
図6 現状の目標管理は自社に適しており、このまま続けるべきと思いますか?(単一選択)
■ 有意差検定
次に、目標管理手法の中でよく対比される「MBO」と「OKR」において、「効果・メリット」と「課題」の有意差を統計的に分析しました。
効果・メリットについては、下記のような有意差が見られました。
MBO特有の効果・メリットが見られた項目としては、以下の2つです。
① 「会社のビジョンや経営層の目標・ミッションなどが明確になり浸透しやすい」
② 「人事評価の判断基準がわかりやすく、従業員からの納得が得られやすい」
一方、OKR特有の効果・メリットが見られた項目は、以下の3つです。
① 「縦や横(他部署含む)のコミュニケーションが活発化する」
② 「上司(または部下)とのコミュニケーションが密になる」
③ 「従業員の自律や自主性を高めることに貢献している」
その他の8項目については、「MBO」と「OKR」において統計的に優位といえる差は見られませんでした。
次に、課題については下記のような有意差が見られました。
MBO特有の課題が見られた項目は、以下の3つです。
① 「目標を達成しやすいよう低く設定するケースがある」
② 「自分の目標に関係のない業務の優先度が低くなりがち」
③ 「短期業績目標が中心のため、腰を据えた中長期的な取り組みがしづらい」
一方、OKR特有の課題は見られませんでした。
その他の10項目は、「MBO」と「OKR」において統計的に優位といえる差は見られませんでした。
■ 株式会社アジャイルHRにおけるパフォーマンスマネジメントの取り組みについて
アジャイルHRにおけるこれまでのサポート事例から、0→1(ゼロイチ)や1→10(イチジュウ)と言われるような、事業の方程式を探す、ないしはこれから作っていくという『投資フェーズ』では、新しいアイデアの創出やトライ&エラーが必要となるため、MBOはフィットしづらく、OKRのような目標管理が適していると考えられます。
一方で、10→100(ジュウヒャク)と言われるような事業が成熟・安定ステージに入った『拡大再生産フェーズ』では、利益を生み出す方程式が確立しており、前年対比なども容易となるため、MBOが適用可能です(『拡大再生産フェーズ』におけるOKRの活用も可能)。
ただし、本調査結果にも見られるとおり、大企業の多くが導入しているMBOには、
– 形ばかりになっており、形骸化している
– 毎年同じような目標を立てており、発展性がない
– 目標がほぼ決められてしまい、やらされ感が強い
といった課題もあり、従業員のエンゲージメントを高めにくいという問題があります。
そのため、MBOを目標管理手法として導入している場合は、従業員エンゲージメントを高める包括的なパフォーマンスマネジメントが求められます。
アジャイルHRでは、目標管理(OKR)、キャリアデベロップメント、360度フィードバックを組み合わせ、1on1でマネジャーがメンバーの支援しながら、エンゲージメントサーベイで効果を検証することで、従業員エンゲージメントを継続的に高めるパフォーマンスマネジメントの構築を支援しています(図7)。
図7 アジャイルHRにおけるパフォーマンスマネジメントサービス
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本アンケート調査の概要
1.調査の目的
企業のパフォーマンスマネジメントと従業員のキャリアマネジメントをうまく回していくためには、適切な目標管理と上司と部下のコミュニケーションが重要だとアジャイルHRは考えます。
そのため、日本の企業における目標管理の実態と課題を把握することを目的とするアンケートを実施し、現在の日本企業の状況を調査しました。
2.アンケート設問
今回の調査では、目標管理の状況について4問のアンケートを実施しました。
① 社員の目標管理をどのように行っていますか?(単一選択)
② 現在の目標管理手法の効果やメリットはなんですか?(複数選択)
③ 現在の目標管理手法について、課題に感じていることはなんですか?(複数選択)
④ 現状の目標管理は自社に適しており、このまま続けるべきと思いますか?(単一選択)
3.アンケート調査期間および手法
2024/02/28~2024/03/01 インターネット調査
4.調査対象
全国の従業員500名以上の企業に勤める会社員 1,124人(インテージ マイティモニター登録者)
企業規模および業種は下記の通り。
(企業規模)
(業種)